再録『GBIニュース』1998.8.25 Berita GBI WWCR Ryaas Rasyid

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1998年8月~2003年1月まで、宮崎市に拠点を置く㈲ハラパンメディアテックのホームページを間借りして掲載された『GBI(インドネシア文化宮)ニュース』。サーバー事情により消えてしまった一連の記事をここに復刻する。10数年前の出来事、そして当時執筆した時点での情報に基づいているため、その後の展開と新たに判明した事実と相違する内容があるかもしれない。しかし、記録の重要性に鑑み、敢えて原文のまま再録することにした。 

リアス・ラシッド氏(撮影:1998・8・24)

大川誠一の『GBIニュース』1998年8月25日 Berita GBI(25 Agustus 1998) WWCR dgn Prof.Dr.M.Ryaas Rasyid, M.A.

【ジャカルタ発】


民主的なインドネシア国家を目指して。今、最も注目を浴びる男、リアス・ラシッド内務省地方自治・行政局長が語る。

スハルト「王朝」の崩壊に続くハビビ政権誕生。「改革」を旗印に、ハビビ政権は猛スピードで「独裁政治」への決別を図っているかのようにみえる。「神」のような存在として、マスコミとの会見を避けてきた(但し、30年以上にも渡った政権末期に、何を考えたのか、突如スハルト大統領は日本経済新聞の長期連載インタビュー(私の履歴書)に応え、さる一月に日本で華々しいデュー!?)。

スハルト新秩序時代とは異なり、ハビビ大統領は、一般マスコミにも気楽に登場(例えば、日刊紙『コンパス』や隔週週刊誌『フォーラム・クアディラン』など)している。しかし、ハビビ政権が、真にスハルト時代への決別を押し進めているかについては、識者の間で賛否両論があることも事実だ。『ただ服を着替えただけで、中身はスハルト時代と大差ない』と、反体制派のアリ・サディキン元ジャカルタ知事が強調しているように、客観的にみても、ハビビ政権に対する一般国民の目は冷めきっている。『早期に総選挙を実施して、国民協議会を通じて、真に国民によって選ばれた大統領の下で、主権を国民の手に取り戻す』(英字紙『ジャカルタ・ポスト』のスサント・プジョマルトノ編集長談)ことが、国民の最大関心事だ。

民主的な総選挙と民主的な政治機構の構築に向けて、各種政治法案が現在検討されているが、その機関車役を果たしているのが、内務省地方自治・行政局長のリアス・ラシッド氏、48歳だ。今、インドネシアで最も注目されている男と言って差し支えない。南スラウエシ出身で、アメリカの北イリノイ大学で政治学のマスターを取得(1988)、さらにハワイ大学で博士号を得た(1994)、身長171cm、体重68kg、血液型ABの、「Cinta(愛)」と言う言葉が大好きな若手政治学者。彼はIIP(行政学大学)の学長でもある。

『計7人のスタッフで70日かけて創案したこれらの政治法案によって、真の民主国家が生まれることを期待したい。この法案は、色々な解釈ができない、つまり為政者が思い通りに解釈し転用・誤用できない内容となっている。私は確信している。これら法案の下、我々は真の民主主義を実現できる』と、ラシッド氏。ラシッド氏ら「7人グループ」が創案した法案は、政党法、総選挙法、国会・地方議会の立場と編成に関する法律や、地方自治法と公務員法の修正案、さらに新たな法律として、意見の自由に関する法律、大統領並びに権限に関する法律、政治・権限倫理法、などがある。

GBI代表は、8月24日夜、「インドネシアで大統領に次ぎ最も忙しい男」と地元誌が形容するリアス・ラシッド氏と2時間にわたって会見の機会をもった。氏は、今月末にも内務大臣と共に、日本を訪問する予定で、『日本の選挙制度について見識を深めたい。その後はドイツ訪問も計画されており、あちらでも選挙法や政治システムに関して情報を入手したい』とのこと。(日本の選挙法から何を学べる、というのかはなはだ疑問だが、刺身が大好きなラシッド氏、どうか美味しい日本料理を堪能してきて下さい!)。以下、ラシッド氏との会見の一部抜粋。

大川: 大統領の任期については?

ラシッド: 1945年憲法は大統領の再選を妨げないとなっているが、新法案では、二期(計10年間)までの再選を許すのみ。

大川: 大統領リコールのような制度も検討中というが?

ラシッド: 全ての成人国民によってレファレンダム(住民投票)が行え、その合法性、整合性を問うことができる。例えば、レファレンダムによって80%以下の支持しか得られない場合、大統領は退陣などの道を選択すべきだ。しかし、80%以上ならば、退陣を迫ることはできない。

大川: 総選挙に参加するための政党の条件とは?

ラシッド: 最小でも、各政党は全州(27州)の半分以上の州に、すなわち14州以上に支部を持っていなければならない。また、各州においては、半分以上の数の県に支部を開いていることが条件だ。また、100万人以上の支持者(サポーター)がいることも重要な条件だ。

大川: 国会議員の数、地方議会における国軍の議席数は?

ラシッド: 2億以上の人口を考慮すると、国会議員の数は550人が妥当だ。1999年の総選挙を通じて420人が小選挙区から選出され、80人が比例代表制で選ばれ、残りの50人は国軍に振り当てられる。一方、州議会や県議会においては、総議員数の10%の議席が国軍に与えられる。

大川: 東ティモールの地位については?

ラシッド: 独立は認められない。あくまで特別自治権が与えられるだけだ。かつてベロ司教が同地をカトリック地域にしたいと望んだが、それも許されない。今レファレンダムを許せば、兄弟戦争、内戦が起きる可能性が高い。また、今ならインドネシア併合支持派が勝利するだろう。同様に、イリアンジャヤでレファレンダムを実施した場合でも、インドネシア派が勝つと思う。先住民のみでレファレンダムを行うのか、それとも外島から住み着いた人々も含めるのか、これは複雑な問題だ。

大川: アチェ住民のように、連邦制を望む声もあるが?

ラシッド: 連邦は認めない。共和国を壊さずに、どうしたら統一を維持できるのか。これまでは地方に対する中央の対応がはっきり言ってマズかった。開発が悪かったわけではない。この対応をどう改善していくのか、それが大切だ。例えば、まもなく、イリアンジャヤの県知事はすべてイリアンジャヤ出身者となるだろうし、また同様に町長も地元語を話せる人物に交代されていく。そればかりか、まもなくイリアンジャヤ出身でIIP(行政学大学)のジョパリ講師が、駐オランダか駐ドイツの大使に任命されるだろう。

大川: ハビビ大統領をどう見るか?

ラシッド: 経済構造の公正に向けた改善が急務だが、彼にはそれができないと思う。なぜなら彼は、そのことをよくわかっていないからだ。個人的には私は彼に非常に懐疑的だ。彼の周囲には、まだまだコラプター(汚職にまみれた人物)がたくさんいる。彼は、何か新しいことを実施する勇気は持ってるが、しかしビジョンがない。それに感性、敏感性も持ち合わせていない。彼は新しい時代を開くタイプではない。私が恐れることは、仮にハビビが一連の改革に失敗したとき、社会革命(Revolusi Sosial)が起きる可能性だ。

大川: あなたはズバズバと意見を言うが、平気なの?

ラシッド: いままでだってそうだった。別に何も恐れない。そればかりか、今やすべての州知事や州議会、県知事、県議会が、私の発言に注目し、恐れている(ハハハ)。

大川: 日本への期待は?

ラシッド: 新しい選挙制度のもとで、新しく生まれる政権を支持して欲しいということだ。インドネシア共和国が分裂状態にならないためにも、是非サポートしてほしい。分裂の可能性について考えると、夜も眠れない。


(追記:2011.5.27)
リアス・ラシッド(Profe. Dr. M. Ryaas Rasyid, M.A.)氏は、元IIP(国立行政学院)学長、国民協議会(MPR)議員(1997-2002)、内務省地方自治局長(1998-1999)、地方自治大臣(1999-2000)、国家機関強化担当国務相(2000-2001)を経て現在はインドネシア大統領諮問会議委員(Anggota Dewan Pertimbangan Presiden)。

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【参考ブログ】

再録『GBIニュース』1998.8.24 Berita GBI(24.8.98) Aceh
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_26.html

再録『GBIニュース』1998.8.21(No.2) BeritaGBI(21.8.98) Irja
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_25.html

再録『GBIニュース』1998.8.21 Berita GBI(21.8.1998)アリ・サディキン
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_24.html

再録『GBIニュース』1998.8.20 Berita GBI(20.8.1998) 50人グループ
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_23.html

再録『GBIニュース』1998.819(No.2) BeritaGBI(19.8.1998)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_22.html

再録『GBIニュース』1998.819 BeritaGBI(19.8.1998) IrianJaya
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_21.html

再録『GBIニュース』1998.8.18 Berita GBI(18 Agu.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_20.html

再録『GBIニュース』1998年8月18日Berita GBI(18 Agu.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_18.html

再録『GBIニュース』1998年8月17日Berita GBI(17 Agu.1998)HUT RI
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_14.html

再録『GBIニュース』1998年8月14日Berita GBI(14 Agu.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201105/article_1.html

再録『GBIニュース』1998年8月12日Berita GBI(12 Agu.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201104/article_30.html

再録『GBIニュース』1998年8月11日Berita GBI(11 Agu.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201104/article_29.html

再録『GBIニュース』1998年8月10日Berita GBI(10 Agu.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201104/article_28.html

再録『GBIニュース』1998年8月9日 Berita GBI(9 Agus.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201104/article_27.html

再録『GBIニュース』1998年8月8日 Berita GBI(8 Agus.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201104/article_26.html

再録『GBIニュース』1998年8月7日 Berita GBI(7 Agus.1998) Tim2
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再録『GBIニュース』1998年8月5日 Berita GBI(5 Agus.1998) Tim2
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201104/article_24.html

再録・大川誠一の『GBIニュース』1998年8月3日 Berita GBI(3 Agus.1998)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201104/article_22.html

インドネシア文化宮(GBI)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/

インドネシア文化宮2010年活動記録(Kegiatan GBI pada tahun 2010)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201101/article_1.html

インドネシア文化宮(GBI)満12歳です HUT GBI ke-12 thn
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201005/article_15.html

インドネシア文化宮2009年活動記録(Kegiatan GBI pada tahun 2009)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201001/article_1.html

インドネシア文化宮2008年活動記録(Kegiatan GBI pada tahun 2008)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200901/article_1.html

インドネシア文化宮2007年活動記録(Kegiatan GBI pada tahun 2007)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200712/article_2.html

インドネシア文化宮2006年活動記録(Kegiatan GBI pada tahun 2006)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200612/article_8.html

インドネシア文化宮活動記録(日本語)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200610/article_2.html

インドネシア文化宮活動記録(インドネシア語)Kegiatan GBI
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200610/article_4.html

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