芳野未央のアロール島紀行「ウォーレス線を越えろ!」(No.19) Ke Pulau Alor,NTT

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インドネシア文化宮(GBI)は、2002年~2008年の7年間にわたって、NTT(東ヌサトゥンガラ)州アロール県(Kab.Alor)との共催で、文化活動を軸とした島興しプロジェクトである大文化祭『エキスポ・アロール』を実施しました。“海のシャングリラ”と言っても過言ではない、美しい海底サンゴの園を有するアロール島とパンタール島、そしてブアヤ島、テルナテ島、プラ島、ケパ島などから成るアロール県。

GBIの呼びかけに応じて、これまで延べ数百名の日本人が現地を訪れた。そして、今夏、ナタラジャ・バリ(Nataraja Bali)を主宰するバリ舞踊家の芳野未央さんが「ウォーレス線を超える」との長年の夢実現を目指して、アロール島に旅立った。中学生の時、初めてバリ舞踊を見て感動。高校に入ると直ちに舞踊練習に着手。大学時代にはバリ島通い---と、芳野さんとバリ島との付き合いは筋金入り。

そして、卒業論文のテーマに「バリ島のコオロギ相撲」を課題に選び現地調査。バリ舞踊からコオロギまで。そういえば、あの『昆虫記』のジャン・アンリ・ファーブルも、昆虫研究の一方で、作曲家としての顔をも持っていた。ひょっとすると、芳野さん、舞踊家の裏面に博物学者の姿を隠しているのかもしれない。以下、シリーズでお届けする芳野未央の『ウォーレス線を越えろ!』紀行。


2003年7月、インドネシア文化宮で行われた『アロール島ソンケット展』のため来日したイナンさん。着物姿にご満悦(撮影:GBI)。

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バリ島の東側には、ウォーレス線が通っている。ウォーレス線は、アルフレッド・ウォーレスが発見した生物の分布境界線だ。バリ島はアジア区。ロンボク島以東はオーストラリア区。ウォーレスは、マレー諸島(現インドネシア)の採集旅行を通して、ダーウィンと同時期に独自に進化論に到達した。進化論の島はガラパゴスだけじゃない。インドネシアだって進化論の島々なのだ。(ウォーレスの『マレー諸島』は、旅行記としてとても面白いので、ぜひご一読ください。)インドネシアに通い始めて二十年以上経つが、実は、バリ島より東側に行ったことがない。今回、とうとうウォーレス線を越えてきた。

2010年6月14日(月) アロール島

----イブ・イナンのなんでも相談室----

昨日、イブ・イナンが「夕食は家で食べなさい」と言っていたので、電話するが、なかなかつながらない。繋がったと思ったら「じゃあ、今来る?」と、迎えをよこしてくれる。家具工場の職人さんだかが、バイクでやってきた。後部席の足を乗せるところが片方ないので、片足をぷらーんと自分で支えなくてはならない。これ意外に疲れるもんですね。

イブ・イナンの家に着き、イブと一緒に夕食をいただく。ナシ・クニン(ターメリックで黄色く色をつけて、軽く味付けしたご飯)、鶏肉のカレー煮、ミー・ゴレン(焼きそば)。鶏肉美味しかったー。ショウガをすったのがたくさん入っていたと思う。

旦那の親戚だというおっちゃんが訪ねてきて、イブとやりとりを始める。奥さんの足の痛みのための薬をくれ、と言っているようだ。イブは注意事項を説明したり、あげるんじゃなくて売ってあげるんだからね、と念を押したりしている。このおっちゃんに対してはいつも手厳しいらしく、おっちゃんは私に向かって、ニカニカしながら「イブ・イナンは、俺に対してはいっつもこうなんだよ~」とか言っている。やりとりは決して険悪なものではなく、笑いながら言い合っている。

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プラ(Pura)島は急峻な元火山。岩の海辺から石畳の急坂が続く。戦時中には日本軍が開いた国民学校があった。村の広場には“聖なる祭壇”である石積みのメスバがある(撮影:GBI)。

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サバンジャール海岸でくつろぐイナンさんイナンさんのご主人はジャワ島出身。大きなシャコガイの化石のクレクターでもある。アロールの山中には巨大なオオシャコガイの化石がゴロゴロ(撮影:GBI)。

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2003年の来日時、イナンさんは、アロール県知事夫人のディナさん(右)とGBIスタッフと沖縄県名護市にある名桜大学を訪れ、夏季集中講義「アロール県の現状」に参加した(撮影:GBI)。

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日本から持ち帰った着物を県都カラバヒでも普通に着用しているイナンさん。2005年8月、アロール・エキスポの会場で国営テレビ局TVRIのNTT放送局アナウンサーのイナさん(左)と共に(撮影:GBI)。

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2006年8月の第5回アロール・エキスポでGBIが“開講”した寿司作り講座でアシスタントを務めたイナンさん(右)。目の前には大きなマグロ、2008年8月の第7回アロール・エキスポで行われたセミナーで発言するイナンさん(撮影:GBI)。

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別のおじさんも登場。何の用なのか、用があるのかも良く分からないが、イブは二人に飯を食わせ、結局、最初のおっちゃんの奥さんの様子を見てくると言って出かけて行った。いつもこうなのだろうなあ、と思う。いろんな面倒事の尻を持ち込まれて、それを当たり前のように対応してあげる。インドネシアの「オラン・ブサール」というのは、だいたいこういうものだ。オランブサールというのは直訳すると「大きい人」で、大人物、実力者、みたいな意味だ。お金持ちでもあるわけで、親族郎党がそれを頼りにするのが当たり前。

その後、イブご自慢のAVルームで、イブが日本に行った時の写真を見、イブ作詞の歌の入ったVCDを鑑賞する。
歌は、NTTのいわゆるポップ・ダエラ(地方ポップス)で、数組の歌手が登場したが、みな素晴らしい歌唱力。声質もいい。でも、曲はそんなに面白くないんだよね…。毒のない歌謡曲といったところ。2枚渡されて、1枚は私に、1枚はGBIへ、ということでした。
 
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アロール島のイカット染色は、自然天然色。樹木の根、葉、茎などから100種類もの色が創られている(撮影:GBI)。

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アロール県知事夫人のディナさんは、伝統自然色の復活を提唱し、イカットやソンケットの織り手と共に、100種類を超える天然色の開発に成功した(撮影:GBI)。

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さらに、お土産として、イカットのスレンダンをもらってしまった。うーん、今回、イカットは買わないというつもりでいたが、もらい物で3枚も手に入れてしまった。私は、伝統工芸品というような物はだいたい好きだ。好きであるゆえに、伝統的なやり方で作っていないまがい物なら、いらないと思う。そして、伝統的なイカットの本物は、高くて買えないのが分かっていたから、買わないつもりでいたのだ。スレンダンはマフラーにするのにちょうどいい大きさなので、この冬はこれを使おう。
帰りは、旦那さんに車で送ってもらう。荷造りをして寝る。明日はもうバリに帰るんだな~。


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2008年11月15日、インドネシア文化宮で始まったバリ島舞踊写真展(2008年11~2009年2月)オープニングでバリ舞踊のPanyambrama(歓迎の踊り)とMargapati(森の王の踊り)を披露する芳野さん(撮影:GBI)


(注)画像は特に表示がない場合、芳野未央さん撮影


★★★お知らせ★★★

芳野さんも参加するバリ舞踊公演が来る12月12日(日)、東京・神楽坂で行われます。是非ご覧になってください!

ガムラン・バテル+バリ舞踊  サンディア・ムルティ 東京公演 
~ 夢一夜 五雲光芒 ~


2010年12月12日 開演14:30/18:00 (各回30分前開場)
場所:神楽坂セッションハウス
http://www.session-house.net/
前売:¥3000 当日:¥3500 (自由席)
チラシはホームページで見られます。
http://www.geocities.jp/nataraja_bali/
お問合せ・ご予約:gamelan_batel@yahoo.co.jp





http://www.digibook.net/d/5a55edff8018b2752293a9157f6a8524/?viewerMode=fullWindow




http://www.digibook.net/d/9685ad5b91d8923922d129854b604466/?viewerMode=fullWindow




http://www.digibook.net/d/7444ef57a19db87cabbbb1b5fb6a4420/?viewerMode=fullWindow




http://www.digibook.net/d/219483ffa018b03d271cb9257b69c436/?viewerMode=fullWindow


【芳野未央プロフィール】

1988年4月 東京都立小平南高等学校入学。バリ舞踊を学びはじめる      
1992年4月 東京農業大学農学部農学科入学
1996年3月 東京農業大学農学部農学科(昆虫学研究室)卒業
1996年9月 インドネシア政府国費留学生(ダルマシスワ)としてインドネシア芸術大学バリ島デンパサール校

STSI(現ISI)留学。バリ舞踊専攻
1998年3月 帰国
1998年5月 自主公演「ナタラジャ・バリ」第一回開催。以後、平成20年まで9回開催
2000年6月 ガムラングループ・スカールジュプンのバリ島アートフェスティバル公演に参加。
2005年3月 スマトラ沖地震被災地アチェ支援チャリティー「ゴトンロヨン」公演(都内3箇所)
2007年6月 創作ガンブー公演「竹取物語」演出・振付・出演

<講師歴>
1999年 4月~ 読売日本テレビ文化センター 錦糸町校
2005年12月~ 神宮外苑フィットネスクラブ サマディ
2010年 2月~ 東急セミナーBE 渋谷校

<バリでの師匠>
【 】内は習った踊り。

・イブ・チュニック:バトゥアン村、ジョゲピンギタンの踊り手。バリ最高齢の現役ダンサーだったが、2010年、85歳(推定)で天寿を全うする。トペン舞踊の名手まマデ・ジマットの母。【ジョゲピンギタン、バトゥアンのルジャン】
 
・イブ・カスニン:シンガラジャ・サワン村、タルナジャヤの踊り手。タルナジャヤ作者から直接教えを受けた最後の世代。数年前に亡くなる。【クビヤール・レゴン】

・グス・アジ・ブランシンガ:ブランシンガ村、クビヤール・ドゥドゥックの踊り手。70歳を超えてなおダンディな往年の大スター。【クビヤール・ドゥドゥック、バリス】

・グスティ・アユ・ラカ:プリアタン村、オレッグ・タムリリンガンの最初の踊り手。伝説的な踊り手マリオに直接指導を受けた最後の世代。【オレッグ・タムリリンガン】

・アナック・アグン・ラカ:プリアタン村、プリアタンスタイルの継承者。グヌンサリ、ティルタサリ、両舞踊楽団の創始者マンダラ翁の娘さん。【プリアタンスタイルのレゴン各種、ペンデット、プスパメカール】
 
・イブ・アユ・コルミ:スバリ村、ジョゲピンギタンの踊り手。スバリスタイルのジョゲピンギタン唯一の継承者。【ジョゲピンギタン】

・アナック・アグン・アノム:ウブド村、バリスの名手。スマララティ舞踊楽団のリーダーでもある。【バリス】
 
・イブ・アユ:ウブド村、オレッグとタルナジャヤの名手。アノムの妻であり、グスティ・アユ・ラカの姪。【タルナジャヤ、レゴン】

・イブ・スカール:バトゥアン村、イブ・チュニックの孫。バトゥアンのお家芸ガンブーをはじめ、男踊りもこなすマルチプレイヤー。【ガンブー、ウィラナタ、など】

・ニョマン・ブディアルト:バトゥアン村、イブ・チュニックの孫。マデ・ジマットの長男で最強のジャウック・ダンサー。【トペン・ニッコー、ジャウック】

・チョコルド・ルクミニ・プトゥリ:シンガパドゥ村、オレッグを得意とする。最近ではアートフェスティバルのコンペティションのための指導を数多く手がけ、多くを入賞に導いている。【プスパワルナ、チャンドラワシ、マヌックラワ、ユダパティ、ダヌールダラ、ウィラナタなど】

・イブ・アリニ:デンパサール市、レゴンの名手。【ドゥマンミリン】

・イブ・スシラ:デンパサール市、チョンドンの名手。【レゴン・ラッサム】

・イブ・パルティニ:デンパサール市、古典的男性舞踊の名手。【パンジ・スミラン】

・イブ・チャンドリ:シンガパドゥ村、歌謡劇アルジョのカリスマ。バリ歌謡といえば、第一にこの人の名前が挙がる。【アルジョ】
 
・バパ・スクルタ:パヤンガン村、影絵劇ワヤンの演者(ダラン)。トペン舞踊も踊る。【歌】
 
・イブ・アグン:タティアピ村、ジャンゲールの継承者。古いスタイルのジャンゲールの男女両方の歌と振り付けを教えられる。インドネシア空手シラットの使い手でもある。【ジャンゲール】

【関連ブログ】

芳野未央のアロール島紀行「ウォーレス線を越えろ!」Ke Pulau Alor, NTT~(No.18)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_17.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_18.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_19.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_20.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_21.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_22.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_23.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_24.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_25.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_26.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_27.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_28.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_29.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201011/article_30.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201012/article_1.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201012/article_2.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201012/article_3.html
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201012/article_5.html

『LIKE・A・BALIJINウブドの達人展』スタート(Pameran Foto Bali)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200811/article_19.html

【芳野さんのWebsite】

ナタラジャ・バリ(Nataraja Bali)ホームページ
http://www.geocities.jp/nataraja_bali/

ナタラジャ・バリのバリ島の本
http://blog.livedoor.jp/balibooks/

【アロール島関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/c88587e2d0.html


【東ヌサトゥンガラ州関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/46f57db1d2.html


【アロール関連動画】


東ヌサトゥンガラ州アロール島の海 The Sea of Alor Island
http://www.youtube.com/watch?v=u00GOBDWVfE


東ヌサトゥンガラ州アロール県のモコ博物館 Musium Moko, Alor, NTT
http://www.youtube.com/watch?v=3yuUq-cA_0U


NTT州アロール島のレゴレゴ・ダンスの今昔 Lego-Lego Dance of Alor Regency, NTT
http://www.youtube.com/watch?v=o5PvQtRPtKs


東ヌサトゥンガラ州フローレス&アロール島 Promotion Video Flores & Alor Islands
http://www.youtube.com/watch?v=M0EZqVYBr2Y


東ヌサトゥンガラ州プロモーションビデオ Promotion Video NTT Province Indonesia
http://www.youtube.com/watch?v=GuP7Qg1801g


【ササンドゥ関連ブログ】
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/theme/7a2ebd273c.html

【ササンドゥ関連動画】


バリ芸術祭でザカリアス・ンダオンさんがササンドゥ演奏(1) PKB ke-32(撮影:芳野未央)
http://www.youtube.com/watch?v=itE5oQ1MA9I


バリ芸術祭でザカリアス・ンダオンさんがササンドゥ演奏(2) PKB ke-32(撮影:芳野未央)
http://www.youtube.com/watch?v=rz6Wc__3DJ0

【ササンドゥ関連動画一覧】
http://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%B5%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A5&aq=f

アロール県政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.alorkab.go.id/

NTT(東ヌサトゥンガラ)州政府公式ホームページ(インドネシア語)
http://www.nttprov.go.id/

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