バリ島との接点(松尾真美さんの場合)Pulau Dewata, BALI, bagi Matsuo

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バリ島が持つ“磁力”に衰えは見えない。二度もの爆弾テロに見舞われながらも、“神々の島(Pulau Dewata)”バリは、国際リゾート地として着実に復活を遂げている。世界中から観光客を引き寄せ続けている。昨年、同島を訪れた外国人観光客はおよそ200万人。バリ州政府統計局の発表によれば、2008年の観光客数は1,992,299人。そして第一位は日本人。その数、359,827人。全体の18,06%を占める。この数値は、前年比で見ると、2.21%(7,789人)の増加。第二位は:オーストラリア人(313,313人)で前年比52.68%のアップ。第三位以下は:韓国(134,909人)、中国(131,319人)、台湾(130,449人)、マレーシア(129,727人)、イギリス(82,827人)、ドイツ(82,686人)、フランス(77,379人)、アメリカ(68,619人)、そしてその他の国々(481,244人)。


バリ舞踊公演を前に着飾った生徒たち(Mami Matsuo)。


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アスラマ(寮)の生徒たちと私(Mami Matsuo)。


筆者も1970年代初頭以降、東部インドネシア地域への中継地として何度も訪れている。が、ここではバリ島の魅力が何であるかを論じるつもりはない。不可思議で、蠱惑的な魅力を秘めたバリ島は、旅人を憑かれたようにリピーターにしてしまっている。彼がいるから行く女性もいるだろうし、彼女がいるから行く男性もいるでしょう。そしてスパとエステの虜になって頻繁に通う人もいるでしょう。また、雑貨の仕入れや、現地でのビジネス展開のために行く人も少なくない。定年後の異国ステイで選択する方も増えてきていると聞く。各人各様の思いでバリ島との接点を持っている。迂闊と言えばそれまでだが、筆者はこれまで、バリ島を、京都在住の松尾真美さんのような視点で見ることはなかった。松尾さんとバリ島との接点は「特別支援学校」だ。


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自閉症のクラス(Mami Matsuo)。


「病院で目を覚ました時、私が死んだと思って親戚中の人が集まっていた光景を今だに鮮明に覚えています」。松尾さんは、平成12年、予期せぬ交通事故に遭い、生死を彷徨う危機を乗り越え、平成17年まで、6年間もの闘病生活を送った。「目が見えなくなったり、全身不随の状態で過した時期もありました」。

「今は日常生活の支障はありませんが頚椎をいためていて後遺症も出ている状態です。今はすっかり社会復帰していますが、事故以前は10年ほど真剣にサーフィンをしていました。その為か人一倍筋肉も付いていたので、それで怪我の治りが早かったようです。仕事より何よりサーフィンが出来るように復活したいという思いだけで、リハビリに耐えられたんだと思います」。

「人は夢中になれる何か目標を持つ事で、何でも夢が叶うんだ、とその時初めて思いました。同じ人間でどんな人種でも、どんな障害や怪我を抱えていても、潜在能力がある限り不可能だった事が可能になるんだと思いました」。



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満月祭(Mami Matuo)。


「あの時、私は生きる方に選択権を与えられ、まだこの世で生きていかなければならない何かがあるんだと思い、それから全ての価値観やものの考え方がプラスに変わりました。そんな事でこれからの人生は、自分のこれまでの経験を元に何かの役に立つ生き方を、サーフィンと共にしていこうと思った訳です。何か障害があったり自分の取り巻く環境で目的が果たせなかったりする人達の手助けやアドバイスをしていきたいと。私はサーフィンが心の支えでしたが私みたいにスポーツでなくても何でもいいんです。その人に合った何かを見つける手助けが出来ればいいと思っています。一人でも多くの人の目的が達成できる様に生きがいを見つける事が出来る様に手助けをしていきたいと思っています」。

今、障害者支援の仕事をしている松尾さんは、昨年4月、“神々の島”を初めて訪れた。

「バリ島を選んだのは私の生きがいであるサーフィンと、すべてのものに精霊が宿るという考え方や気持ちの上で日本人によくある白黒はっきりしないグレーゾーンを大切にするところがバリ島にあると思ったからです」。

「それまで、海外は何ヵ国か行ったことがありましたが、バリ島は最後に残しておきたいと場所として、ずっと保留状態でした。行ったこともないのに、そう思っていました。きっと、インスピレーションなんでしょうね。あそこで何か自分の足跡を残したいと思っていました。行ってみて、やはりその通りだったことが不思議です」。



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生徒によるバリ舞踊公演(Mami Matsuo)。


バリ島から戻った松尾さんは、障害者支援の仕事を続ける傍ら、バリ島で、障害を持った人々や社会的弱者の人々のために何ができるのかを考え続けている。

「もっともっと深くバリの人々と繋がっていく為には、文化や宗教、歴史など色々な事を理解していかなければならないと思っています。その為には、まず私がインドネシア語を覚えなければならないと思っています」---大学でインドネシア語を専攻し、さらにインドネシアへ留学しながらも、インドネシアとは全く無関係な仕事に就き、しかもインドネシアに特別の感情を持たない多くの日本の若者を筆者は知っている。言葉はコミュニケーションの必要不可欠の道具だ。松尾さんのインドネシア語学習の動機に、それら若者たちは言葉を失う。今、松尾さんは独学で一生懸命インドネシア語を学んでいる。

「9月のバリ島への旅は何もかもが不便で情報もなかなか集まらず、日本にいる友人達にインターネットで情報を集めてもらいやっといくつかの施設を訪問する事が出来ました。おぼつかないインドネシア語でしたが、全て自力で情報を集め、自分の足で一軒づつ訪問し支援員や利用者の方々と直に触れ合って肌で感じてきました。いくつか訪問した中で最も深くそして私を家族の様に受け入れてくれた学校がありました」。こうして、松尾さんは、ジンバランにある『SLB-B PTN JIMBARAN(聴覚障害児のための養護学校)』を知ることになる。

「旅の結論は、障害者や社会的弱者が、バリ島で社会参加をしていく事が出来るように何か手助けができないか、ということでした。バリでは昔の日本の様に障害者に対して偏見や差別、家から外には出さないといった感じがまだ残っています。その人達をどうにか社会参加できるようにしたいと願っています。少しずつ和を広げ少しでも偏見をなくしていけたらな、と」。



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バリ島ジンバランのSLB B(同校ホームページより)。

「この学校の宿舎には聴覚障害の子供達が住んでいて、さらに通いでいろんな障害を持った子供達が勉強に来ています。私はこの学校に一週間程ステイさせて頂き、それからも何度も顔を出して校長先生をはじめ他の先生や生徒達みんなととても仲良くさせて頂きました。昼や夜は生徒達と一緒に夕食を作ったり草野球したり。行事には必ず声をかけてくれました。スパのクラスやパソコンのクラス、リハビリにも参加させて頂きました」。

「この学校で、ほんとにたくさんのクラスの様子を見学させて頂き、私が今日本で自閉症の子供を主に介護している事から自閉症の子供達の授業にも参加させて頂きました。日本でもそうですがバリでは自閉症自体みんな知らなくて先生達もどう対処すればいいのかわからないといった様子が伺えました。校長先生のマデさんによれば、初めは聴覚障害者だけを支援していたのですが、だんだんいろんな障害の子供を持つ親達が集まって、うちの子も....という人達が増え、今はいろんな障害を抱える生徒達が集まる学校になったのだそうです」。

「あと、この学校とは関係ないのですが、ストリートチルドレンの支援施設を訪問した時の事です。クタの近くにある支援施設で育った子供(サンジャ君)が、ボランティアのオーストラリア人にサーフィンを教えてもらい大きくなってからもずっとサーフィンを続けているという話を聞きました。私は、早速彼に会いに行きました。何度か一緒にサーフィンしました。サンジャはサーフィンに生きがいを見つけ、それをストリートチルドレンに教えています。世界中には、聴覚障害者のサーファーもたくさんいます。私は、何ができるのか?今、そんなことを考えながら、次のバリ島訪問のチャンスを待っています」。


SLB B Jimbaranの授業風景(同校ホームページより)。

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【松尾真美さんのプロフィール】

中学の時、初めて海外へ行き、海外生活に憧れを抱く。その夢は、芸術系専門学校を卒業後、オーストラリアに一年間ワーキングホリデーで滞在することで実現。「海外生活のお陰で、日本が大好きになり、そして日本人であることに誇りを持てるようになりました」。
学生時代に虜になったサーフィン。休日には必ず海へ直行という生活。しかし、交通事故で6年間の闘病生活に。「でも、この経験が人生の節目となり、そして生きざまを変えるようになりました」。

今の目標は?「何かに夢中になり続けること。謝れる大人になり続けること。自分を好きになり続けること。そしてサーフィンと仕事を両立させること」。
好きなことは?「色々な国の人々と関わっていくこと。人の長所を見るけること。人を和ませること、かな」。
36歳。京都在住。



【参考ブログ】

SLB B Jimbaran
http://www.slbb-dps.sch.id/


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