東部インドネシアの旧日本軍航空基地(28) Bandara Dai Nippon(28) ナビレ

画像



フェールヴィンク湾周辺では日本軍占領当初、陸海軍合計17個の飛行場設定が計画されたが、昭和18(1943)年8月時点で完成していたものはナビレ(Nabire)の海軍飛行場1個のみだった。この飛行場はその規模が、長さ1,200m、幅60mで、1943年4月15日に戦闘機用として、そして5月17日に中攻(中型陸上攻撃機)用として完成していた。ちなみに、第二軍がマノクワリに進駐する前年(1943)までに、海軍並びに陸軍第5師団が占領する西部ニューギニア地域で、完成もしくは概成していた飛行場は以下の7個だった。

ナビレ市とナビレ空港(衛星画像)


画像



① 海軍のバボ飛行場:1942年4月進駐。翌年5月中旬時点で1本は長さ900m、幅50m。もう1本は長さ1,200m、幅60mで1,600mに延長中。
② 海軍のソロン(エフマン)飛行場。1942.4月進出。蘭印軍の空港を利用し、長さ1,400m、幅40mの滑走路を整備。
③ 海軍のホランジア(センタニ)飛行場: 1943年2月完成。
④ 海軍のナビレ飛行場:1943年4月15日に戦闘機用として完成。5月17日、中攻用として完成。長さ1,200m、幅60m。
⑤ 海軍のカイマナ(マトア)飛行場:1943年4月25日概成。独立工兵第3連隊担任。長さ1,300m、幅75m。海軍に委譲。
⑥ 陸軍のミミカ飛行場:1943年5月11日完成。第5師団の高橋歩兵第11連隊担当。長さ1,000m、幅50m。
⑦ 海軍のワクデ飛行場:1943年5月中旬概成。長さ1,300m、幅120m。長さ1,500mに拡張中。



画像


ナビレは戦前から日本の企業(南洋興発株式会社)が進出し、ダマル樹脂の採集事業を行っていた。マノクワリに拠点を置いた海軍ニューギニア民政府(総監は浜田海軍中将:昭和17(1942)年10月13日、東京で設置が決まり、1943年1月~1944年1月まで機能した。但し1944年2月1日以降、民政府は解体され、第26海軍建設部が設立された)の土木課もナビレ飛行場の整備に参画したとされる。

ナビレ空港(川の左側に細長い滑走路が見える)


画像



米軍機の攻撃を受けるナビレ飛行場:US Army(7 July 1944)
連合軍は、1943年4月27日~1944年9月11日、ナビレ飛行場に空爆を繰り返した。



画像



一方、昭和18年末にマノクワリで統帥を発動した第二軍(豊島房太郎中将)は、ビアク(Biak)島の南、フェールヴィンク湾に浮かぶヤーペン(Yapen)島に翌年(1944)末までに2個の戦闘機用飛行場の建設計画を持っていた。1943年11月、第19軍第107野戦飛行場設定隊(大森正夫少佐)はマノクワリのレンダニ飛行場の造成に従事しつつ、ヤーペン島への移動を準備していたとされる。しかし、この第107設定隊は、第二軍歩兵第222連隊長の葛目直幸大佐が、12月25日ビアク島に上陸した後、その指揮下に入り、モクメル飛行場の造成にあたった。一方、ヤーペン島の守備隊として、歩兵第222連隊の第9中隊(長荒瀬泰吉中尉)だけがヤーペン島に配備された(1943年末か44年初旬のことか?)。しかし44年3月29日の第二軍命令によって、この第9中隊はソロンへの転用が下された。以降、ヤーペン島で誰が設定の主役になったのか、あるいは飛行場の造成が実際に行われたのかは不明。
大本営が第二方面軍と第二軍の中国東北部(満州)から豪北に転用を決めた昭和19(1944)年10月、実は中国にあった第36師団と共に第3師団も西部ニューギニアのフォーゲルコップ半島(日本軍は“亀地区”と呼んだ)方面へ配置される予定だった。そのため、第3師団先遣隊(約300名)は12月17日マノクワリに到着。しかし、戦況の変化に伴って、第3師団の転用計画は、第14師団の転用に変更となり、しかも、結果的には第14師団もついに西部ニューギニアにやってくることはなかった。つまり、第36師団のみが、西部ニューギニア北岸並びにビアク島などの守備を背負うことになった。ちなみに“孤児的存在”となった第3師団の先遣隊はというと、第2軍はこれを二分して、一半をウィセル湖警備隊、一半をヤーペン島を含むフェールヴィンク湾諸島で偵察にあたらせた。



画像



日本軍が建設したナビレの飛行場は現在でもナビレ空港として使用されている。滑走路の長さは1,650m、幅は30m。F-27型機の離着陸が可能。ちなみにヤーペン島の中心地セルイ(Serui)には現在スジャルウォ・セルイ(Sudjarwo Serui)空港がある。規模は長さが650m、幅は20m。双発プロペラ機(C-212)型機がビアク島から就航している。


【南洋興発】

1932(昭和7)年、当時オランダ領であった西部ニューギニアに、日本企業として初めて進出したのは、南洋興発合名会社(後の南洋興発株式会社)だった。南洋興発は、松江春次が創設者で、戦前にはサイパン、テニアン、ロタ、アギーガン、パガン、ポナペ、クサイ、トラック、パラオ、ペリリュー、トコベイなどの内南洋地域で、そして外南洋地域では、蘭領西部ニューギニアやハルマヘラ、バチャン、セレベス(スラウェシ)、アンボン、セラム、アルー、アラフラ海、さらにはポルトガル領ティモール、フィリピンのボホールなどで、数々の事業を展開していた。
松江春次は、風雲急を告げる国際情勢にあって、日本の活路は蘭領東印度並びにニューギニアにあると確信、2.26事件の翌年、昭和12(1937)年に、西部ニューギニアのオランダからの租借あるいは買収を提案した(『㊙ 蘭領東印度の開放及びニューギニア問題解決の急務』昭和12年4月 南洋興発株式会社 社長 松江春次)。
南洋興発は、西部ニューギニアにおいて、まずナビレでダマル樹脂の採集事業を手がけた。これはドイツ人経営のフォーニックス開発会社の権利を買収したものだった(『大ニウギニアの相貌』井上義男 興文社 昭和17年3月15日発行)。同社は、後に、マノクワリ南方のムミ(Momi)の平原に大農場を開拓し、綿花、黄麻(こうま・ジュート)を始め、各種農産物を栽培し、また製材事業も始めた。さらにサルミ(Sarmi)でも黄麻農場を経営。マノクワリには事務所を置いた。当時、蘭印外国人従業員規制に基づき、南洋興発の各地の農場で働く日本人は、家族を含めて40名だったとされる。



画像



『㊙ 蘭領東印度の開放及びニューギニア問題解決の急務』


画像



南洋興発㈱の西部ニューギニア方面の事業『㊙ 蘭領東印度の開放及びニューギニア問題解決の急務』より


【参考ブログ】


東部インドネシアの旧日本軍航空基地(27) Bandara Dai Nippon(27) ヌンホル島(Pulau Numfor)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_31.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(26) Bandara Dai Nippon(26) ヌンホル島(Pulau Numfor)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_30.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(25) Bandara Dai Nippon(25) ビアク島(Pulau Biak)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_29.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(24) Bandara Dai Nippon(24) ビアク島(Pulau Biak)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_28.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(23) Bandara Dai Nippon(23) ビアク島(Pulau Biak)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_26.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(22) Bandara Dai Nippon(22) ビアク島(Pulau Biak)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_25.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(21) Bandara Dai Nippon(21) ビアク島(Pulau Biak)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_24.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(20) Bandara Dai Nippon(20) マピア島(Pulau Mapia)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_22.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(19) Bandara Dai Nippon(19) ソロン(Sorong)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_21.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(18) Bandara Dai Nippon(18) ソロン(Sorong)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_20.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(17) Bandara Dai Nippon(17) ソロン(Sorong)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_19.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(16) Bandara Dai Nippon(16) ソロン(Sorong)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_18.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(15) Bandara Dai Nippon(15) イドレ(Idore)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_17.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(14) Bandara Dai Nippon(14) イドレ(Idore)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_16.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(13) Bandara Dai Nippon(13) イドレ(Idore)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_15.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(12) Bandara Dai Nippon(12) マノクワリ(Manokwari)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_14.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(11) Bandara Dai Nippon(11) マノクワリ(Manokwari)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_12.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(10) Bandara Dai Nippon(10) マノクワリ(Manokwari)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_11.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(9) Bandara Dai Nippon(9) マノクワリ(Manokwari)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_10.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(8) Bandara Dai Nippon(8) マノクワリ(Manokwari)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_9.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(7) Bandara Dai Nippon(7) マノクワリ(Manokwari)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_8.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(6) Bandara Dai Nippon(6) サガ&バボ(Saga & Babo)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_7.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(5) Bandara Dai Nippon(5) バボ&サガ(Babo & Saga)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_6.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(4) Bandara Dai Nippon(4) バボ(Babo)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_5.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(3) Bandara Dai Nippon(3) バボ(Babo)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_4.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地(2) Bandara Dai Nippon(2) バボ(Babo)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_3.html

東部インドネシアの旧日本軍航空基地 (Bandara Dai Nippon) バボ(Babo)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200812/article_2.html

マルク州タニンバル紀行(9) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (9)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200807/article_1.html

マルク州タニンバル紀行(8) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (8)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_10.html

マルク州タニンバル紀行(7) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (7)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_9.html

マルク州タニンバル紀行(6) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (6)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_8.html

マルク州タニンバル紀行(5) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (5)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_7.html

マルク州タニンバル紀行(4) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (4)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_6.html

マルク州タニンバル紀行(3) Ke Tanimbar, MTB. Maluk (3)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_5.html

マルク州タニンバル紀行(2) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (2)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_4.html

マルク州タニンバル紀行(1) Ke Tanimbar, MTB, Maluk (1)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200806/article_3.html

アチェに死す(2)Kuburan Warga Jepang di Aceh(2)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200709/article_4.html

戦後が来ない西南東マルク県。占領の傷跡は誰が癒してくれるのか?
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200708/article_6.html

パプアの桜(No.2) Pohon Sakura Papua(No.2)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200706/article_4.html

パプアの桜(No.1) Pohon Sakura Papua(No.1)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200706/article_3.html

西パプア州政府(Provinsi Papua Barat)
http://www.papuabaratprov.go.id/

パプア州政府(Provinsi Papua)
http://web.papua.go.id/

マノクワリ県(Kabupaten Manokwari)
http://www.manokwarikab.go.id/

ヤーペン島嶼県(Kabupaten Kepulauan Yapen)
http://www.yapenwaropen.go.id

ビアク・ヌンホル県(Kabupaten Biak Numfor)
http://www.biak.go.id/

ソロン県(Kabupaten Sorong)
http://www.sorongkab.go.id/

南ソロン県(Kabupaten Sorong Selatan)
http://sorongselatankab.go.id/

サルミ県(Kabupaten Sarmi)
http://www.sarmikab.go.id/

ワローペン県(Kabupaten Waropen)
http://www.waropenkab.go.id/

ファクファク県(Kabupaten Fakfak)
http://www.fakfakkab.go.id/

ビントゥニ湾県(Kabupaten Teluk Bintuni)
http://www.bintunikab.go.id/

ウォンダマ県(Kabupaten Teluk Wondama)
http://www.telukwondama.go.id/

カイマナ県(Kabupaten Kaimana)
http://www.kaimanakab.go.id/

ジャヤプラ市(Kota Jayapura)
http://www.jayapurakota.go.id/

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック