北スラウェシ州紀行(8) イカット文化 Perjalanan ke Sulut (8)

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インドネシアは世界最多の種類を誇るテキスタイル文化を有している。西端のアチェから東端のパプアまで、多種多様な繊維・布文化が花開いている。中でも、イカット(絣)文化は、インドネシアの“お家芸”で、世界中にファンを持つ。スマトラ島、ジャワ島、カリマンタン島、バリ島、東ヌサトゥンガラ(NTT)全域、そしてマルク州のタニンバルなどがイカット産地として知られている。スラウェシ島にもイカット文化はある。トラジャ民族が育んだロンコン(Rongkong)やガルンパン(Galumpang)と呼ばれる布で、前者は南スラウェシ州のルウ(Luwu)県で、後者は西スラウェシ州のマムジュ(Mamuju)県で織られている。その多くが緯絣だ。また南スラウェシ州には、絹糸で織った経絣、例えばリッパ・サベ(Lippa Sabe)がある。また中スラウェシ州の西海岸の港町ドンガラ(Donggala)にも、絹製の経絣がある。
さて、北スラウェシ州ではどうなのか?答えは「あることはある。ないこともない。しかし...」---といったところか。と言うのも、かつて存在したことはあるが、今では消滅してしまっている。もしくは、かつて存在したものを現在“復活”させている、とも言えるからだ。そして「しかし」は、かつてのモチーフに忠実ではなく、外来の模様を多用して“再現”している点、さらには、それらのモチーフを用いたプリント布を、今ジャワ島のジョグジャカルタで作っている点。北スラウェシ州政府は、(歴史的検証が定かでないが)7世紀にミナハサ民族が、樹皮繊維や、パイナップルや芭蕉の繊維、そして竹の繊維を用いて織り始めたとされるベンテナン(Bentenan)布を、同州の新たな「アイコン」として本格的に“復活”させようとしている。丁子の生産地として有名な、ミナハサ県のソンデール(Sonder)には、州政府が建設したベンテナン・センターがある。同センターは、同施設で織ったベンテナン布やジャワで作られたプリント地を販売する一方で、イカット工房も一般公開している。


パイナップルもしくは芭蕉の繊維(Kofo)で作ったとされるサンギヘ諸島の上着(北スラウェシ州博物館収蔵)。

かつて北スラウェシ、特にフィリピンのミンダナオ島との間に点在するサンギヘ(Sangihe)諸島で織られたとされる古い布が、州立博物館(Museum Negeri Provinsi Sulawesi Utara)の一角に数点展示されている。同博物館のスザンナ・ポント展示課長によれば、これらの布は、その昔、男女の部屋の仕切り布、そして女性の上着、男性のサルン(腰巻き)、あるいは頭巾などに用いられていた。『サンギヘ諸島で、今でもこういった布を織っている人がいるかどうかは全く分かりません。おそらくもういないとは思いますが』とスザンナ女史。筆者は、サンギヘ諸島のイカットと本島で生まれたとされるベンテナン布との間に相関関係は特にないと考えているが、マナドでは、サンギヘ諸島で生まれた自然繊維を用いた織布技術が、やがて15世紀に綿糸を使った織物に受け継がれ、以来ベンテナン布と呼ばれるようになった、との説が州政府を中心に喧伝されている。しかし、後述するが、この説は、地元のアカデミズム界では極めて低い支持率であることもまた事実だ。
整理すると、サンギヘ諸島でその昔織られていた布は、確かに樹皮繊維(Fuya)や、パイナップルや芭蕉の繊維(Kofo)、そして竹の繊維(Wau)を用いて、全て自然色で染め上げられたイカット(絣)であった。しかし、ベンテナン布の起源は、15世紀以降に、スペイン、ポルトガル、オランダなど、東部インドネシアの香料を求めてやってきた欧州の航海者・商人たちが、スラウェシ島の外から持ち込み、やがて経年と共に「北スラウェシ起源の布」に化けていった---この解釈が現在のところ、合理的な判断だと思う。



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パイナップルもしくは芭蕉の繊維(Kofo)で織ったサルン型イカット(北スラウェシ州博物館収蔵)。


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樹皮繊維(Fuya)もしくは樹皮そのものの上着(北スラウェシ州博物館収蔵)。


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Kofo製のイカット。西ティモールのモチーフにも似ている。(北スラウェシ州博物館収蔵)。


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展示布の脇には、サンギヘ諸島から運んだとされる織り道具も展示されている。


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州博物館の喫茶室。昔のミナハサ伝統住居が使われている。

【参考ブログ】


北スラウェシ州紀行(7) マナドのお粥  Perjalanan ke Sulut (7)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200810/article_2.html

北スラウェシ州紀行(6) マナド(Manado)  Perjalanan ke Sulut (6)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200810/article_1.html

北スラウェシ州紀行(5) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (5)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200809/article_34.html

北スラウェシ州紀行(4) ブナケン(Bunaken) Perjalanan ke Sulut (4)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200809/article_33.html

北スラウェシ州紀行(3) ブナケン(Bunaken) Perjalanan ke Sulut (3)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200809/article_32.html

北スラウェシ州紀行(2) シーラカンス  Perjalanan ke Sulut (2)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200809/article_31.html

北スラウェシ州紀行(1) マナド(Manado) Perjalanan ke Sulut (1)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200809/article_30.html

マカッサルの「パニンクル」が二冊目の出版(INDONESIA di Panyingkul!)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200807/article_3.html

マカッサル市民ジャーナリズムに支援の手を(Bantuan utk Buku Panyingkul)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200805/article_8.html

マカッサル映画鑑賞&マカッサル文学講演(Film & Sastra Makassar)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200804/article_2.html

西スラウェシの伝統船サンデックで黒潮海道を航海
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200707/article_3.html

トラジャ文化&トラジャ語を学ぶインドネシア理解講座(Budaya & Bahasa Toraja)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200707/article_1.html

トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展(Pameran Tunggal Mike Turusy)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200706/article_10.html

トラジャ人画家マイク・トゥルーシー個展のお知らせ(Pameran Mike Turusy)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200705/article_2.html

北スラウェシ州政府
http://www.sulut.go.id/new/?

マナド市観光局
http://www.manadokota.info/

NSTPB(North Sulawesi Torusim Promotion Borad)
http://www.north-sulawesi.org/index.html

北スラウェシ州サンギヘ諸島県
http://www.sangihe.go.id/

World Ocean Conference 2009
http://www.woc2009.org/

特定非営利活動法人 Manado Net Japan
http://manadonet.com/

Sulutlink Foundation
http://www.sulutlink.org/

常夏のスラウェシ島(インドネシア)情報マガジン
http://www5d.biglobe.ne.jp/~makassar/

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