アチェで日本のドキュメンタリー&アニメ映画を上映(Pemutaran Film di Aceh)

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㈱ユニモトが制作し、インドネシア文化宮がインドネシア語翻訳を担当したドキュメンタリー映画『二つの故国をつなぐ歌』と、㈱教配が制作した防災アニメ『稲むらの火』の上映会が、2007年9月1日~2日、アチェ州の州都バンダアチェで実施された。これは、インドネシア文化宮(GBI)が地元最有力紙「Serambi Indonesia」と共に、同州政府に呼びかけた結果、実現したものである。同州では毎年9月2日が“州教育の日(Hardikda=Hari Pendidikan Daerah)”にあたる。今年は48回目。映画上映会は、このHardikdaの一連の行事の一つとして、幾つかの“困難な”許認可をクリアして州教育局の正式プログラムとなった。

当初は、一回のみの上映の予定だったが、「Serambi Indonesia」紙が大きく取り上げた結果、市内の学校から鑑賞希望が多数寄せられ、結局、まるまる一日を費やす計四回の上映会となった。初回には、『二つの故国をつなぐ歌』に出演しているディーヴァちゃん(中1)も、第一中学校の生徒の一人として参加。もちろん、同映画の“主役”で、ディーヴァのおばあさんにあたるサクラさんも招待され、上映後、感謝の挨拶を行った。

およそ1,800名~2,000名の中高生が鑑賞。州教育長のアナス・アダム氏は「いずれの作品も教育的内容を含んだ素晴らしい内容だ。是非、各県にも送って上映会を開催したい」と絶賛。これに応え、プロデューサーの吉丸昌昭さんは、各々の映画DVDを計14枚を州教育局に贈呈した。「特に、“稲むらの火”は、津波被災のアチェにとって、子供たちが好きなアニメを手法としているだけに、その教育的効果は凄いものがある。子供たちの反応からもそのことがうかがわれる。是非、被災地域の教育機関で上映会を実現したい」と。



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プロデューサーの吉丸昌昭氏とバンダアチェ第一中学校の生徒たち


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一回目の上映後、サクラさんが感謝の挨拶


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吉丸氏からアナス州教育局長へDVDが贈呈された


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“教育の日”の一連の行事を終え、アナス州教育局長は、自宅に、アチェの文化人、教育者を招き、慰労会を開いた


翌日、9月2日に実施された“州教育の日”は、ユニセフの資金援助を受け、これまでにないパフォーマンスで式典が行われた。特に、ACC(Academic Activity Center)を会場として実施された文化ショーでは、アチェの教育史を実録映像で大型スクリーンに映し出し、同時に舞台上で、コメディ、舞踊、音楽など多様なパフォーマンスを演じるという、AVを駆使した演出が大好評を博した。これには、地元の映像関係者や、文化団体が、「何ら圧力のない状況で」(教育史映像を演出した、アチェ人若手ドキュメンタリー監督のマウラナさん談)、州教育局から演出依頼を受けたことに、大きな成功の遠因があるように思われる。
同夜は、地元の有力文化NGO団体のKTP(Komunitas Tikar Pandan)でも、二本の上映会が行われ、およそ30名の地元のアーティストたちが鑑賞。上映後、討論会も行われた。KTPでは、㈱ユニモトから贈呈されたDVDで、今後も上映会を計画している。



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KTPで、上映後、討論会が開かれた


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アチェ州では、巨大津波の被災を経緯に、長年続いた分離独立運動が終息、その後中央政府との間で和平協定が結ばれ、それに伴い、初の州知事直接選挙も実現。現在、元独立アチェ運動(GAM)の幹部だったイルワンディ・ユスフ州知事の下で、急速な災害復興に拍車がかかっている。しかし、一方で、“イスラム色”が市民生活に静かにプレッシャーを与え始めているのも事実だ。「今回の上映会は、州教育の日の行事として、州教育局の施設で行われ、内容が教育的であったために実現した。しかし、これほどたくさんの人が映画を鑑賞したのは近年では例のない画期的なことだった」と州教育局コミュニケーション・テクノロジー・センター長のブスタマン・アリさんが語っているように、今回の映画上映会は、同州にとって異例の出来事だった。というのも、文化&社会をテーマとする文化活動のためには、事前に幾つもの“難関”が控えているからだ。
アリさんによれば、まず、MPU(Majelis Pemusyawaratan Ulama・イスラム学者協議会)の推薦状を入手し、その後、イスラム法局からの推薦状を得、さらに文化活動開催地の首長(今回の場合はバンダアチェ市の市長)からの推薦状と、計3通の推薦状すなわち実質的に許可書を手にしなければならない。そしてこれら3通の推薦状の入手を絶対条件に、最終的に地元警察署が許可書を発行する手順になっている。「今回は、これらの手続きを踏んだが、それにしても教育局以外の第三者が制作した映画を上映できたことは、極めて稀で、その意味で自由なAV教育のための“突破口”を開いたとも言える」とアリさん。
ちなみに、8月末に予定されていた、人気ロックバンドグループ“Nidji”の公演は、これらの許可が満たされなかったため、8,000枚のチケットが完売し、さらにバンドメンバーがすでにバンダアチェに到着していたにも関わらず、公演は中止となった。



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ナザール副知事が「州予算の30%を教育分野に投じる」と宣言、万雷の拍手を受けた


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インドネシア文化宮がインドネシア語の翻訳を担当したアニメ映画「稲むらの火」は、想定外の反響を受けた。上映中、何度も、拍手、そして大爆笑。津波のさ中、子犬を助けるために奮闘する少年の姿に、応援の掛け声も。教育アニメ&映画の力を強く感じた上映会だった。「州教育局では2003年以降、AV教育を強く推し進めていますが、こういった子供たちに受け入れ易いアニメ映画の教材としての使用が、どれほど効果的かを再認識しました。この分野で日本からの援助が得られれば幸いです」とアリさん。


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ナザール副知事が紅白旗の掲揚を見守る。インドネシア独立記念日(8月17日)を控え、同州ではインドネシアの紅白旗が幾つも引き降ろされ、破かれ、焼かれる事件も起きた。このため、“元独立派”幹部を州知事とする同州では、紅白旗の扱いが極めて神経質になっている。


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“教育の日”の展示会場には世界各国の支援組織がブースを開いた。しかしそこに日本の姿はなかった


『じゃかるた新聞』は2007年9月7日付け紙面で、上映会について以下の記事を掲載した


アチェで初公開、1800人鑑賞 インドネシア語版が完成 映画「二つの故国をつなぐ歌」

春の到来を待ちこがれる気持ちをつづった叙情歌「早春賦」を架け橋に、日本とアチェの交流を描いたドキュメンタリー映画「二つの故国をつなぐ歌~Diva 早春賦をうたう」(約四十五分)のインドネシア語版がこのほど完成し、初の上映会がアチェ州バンダアチェで行われた。
主催したのは、作品を制作した日本の映像プロダクションのユニモトと翻訳を担当した東京のインドネシア文化宮(GBI、大川誠一代表)など。
二日間にわたり、当初は二回の上映予定だったが、希望者が殺到したため、合計で五回上映し、千八百人以上が鑑賞するなど大盛況となった。
一日の上映会は、アチェ州政府が共催、地元有力紙のスランビ・インドネシアが後援し、バンダアチェ市の州教育ホールで四回にわたり実施。折しも二日はアチェ州の教育の日に定められていることもあり、一連の行事の一環として、市内の中高生が鑑賞した。
第二次世界大戦中、軍属でアチェ入りした池尻昌言さんとアチェ人のエマさんの娘として終戦直前に生まれ、早春賦との出会いやアチェでの津波など、数奇な運命に翻弄されながらも気丈に生きる主人公のサクラさんや、ユニモト社長でサクラさんのいとこに当たる吉丸昌昭さんが参加。サクラさんと吉丸さんの祖父が作詞した早春賦を歌い継ぐ重要な役柄で作品に登場したサクラさんの孫娘ディーバさんも、自身が通うアチェ第一中学校の生徒とともに鑑賞に加わった。
一回目の上映後、サクラさんは「私の数奇な人生を観ていただきありがたい。早春賦が日本とインドネシアの架け橋になれば光栄だ」とあいさつ。インドネシア語版の制作を提案した吉丸さんは「予想外の反応に大変驚いている。この映画の中に流れる早春賦がアチェで歌い継がれ、両国の友好の灯となることを期待している」と語った。
■稲むらの火も同時上映
今回の上映会に合わせ、ユニモトとGBIは、津波の怖ろしさを説いた逸話「稲むらの火」のDVDのインドネシア語字幕を制作。会場で上映され、大きな反響を呼んだ。
ユニモトは二作品のDVD各十枚を州教育局に寄付。同局は州内の各県・市に配布し、今後、各地で上映会を開く予定だ。



【参考ブログ】



ドキュメンタリー映画『二つの故国をつなぐ歌』がアチェで上映(Film Jepang ke Aceh)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200708/article_10.html

映画『二つの故国をつなぐ歌』ジャカルタ上映&報告
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200704/article_6.html

映画『二つの故国をつなぐ歌』上映会のお知らせ
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200704/article_2.html

早春賦をテーマにした映画が完成しました!
http://soushunfu.blog89.fc2.com/

アチェ伝統刺繍文化展のお知らせ(Pameran Budaya Sulaman Aceh)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200704/article_1.html

映像で見るアチェの今昔
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200701/article_2.html

スマトラ島沖大地震・巨大津波二周年報道写真展のお知らせ
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200612/article_7.html

アチェ&早春賦(映画:二つの故国をつなぐ歌)
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/200702/article_2.html

2007年8月30日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載された映画上映会に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=1&topik=13&beritaid=33867

2007年4月15日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載された展示会に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=1&topik=20&beritaid=27584

2006年12月26日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載された展示会に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=2&topik=39&beritaid=23554

2006年3月1日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載されたジャパン・アチェ・ネット(JAN)と同紙による津波記録本出版に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=1&topik=26&beritaid=15801

2005年12月26日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載された展示会に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=2&topik=39&beritaid=14753

2005年10月20日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載されたアチェ詩集本「慟哭の歌」出版に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=3&topik=46&beritaid=13505

2005年8月23日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載されたジャパン・アチェ・ネット(JAN)と同紙との協力関係に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=1&topik=46&beritaid=12183

2005年8月20日付け「Serambi Indonesia」紙に掲載されたジャパン・アチェ・ネット(JAN)と同紙による津波記録本出版に関する記事
http://www.serambinews.com/old/index.php?aksi=bacaberita&rubrik=3&topik=20&beritaid=12116



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